大江慎也&The Roostersの軌跡

その昔、ルースターズというバンドがあって、SからZに変わって、大江さんが復活して・・・

ルースターズ昔話 (1997.09.17)

ルースターズ昔話 / 斎藤さん (1997.09.17)

THE ROOSTERSを初めて体験したのはテレビ西日本
夜中やっていたL-MOTION RUGだった。
1980年秋頃だったと思う。
北九州市のBANDで、今度デビューするROOSTERSです”と
いった紹介のされかただったと記憶している。
”FOOL FOR YOU”と”どうしようもない恋の唄”の2曲を
やっていた。スーツ姿の4人が演奏している。
「何か変だ」当時坊主頭の中学生にとってこれが第一印象だった。

その頃聴いていたのは洋楽ではビートルズと、50年代のR&Rを
少しずつ、日本のROCKはクールスとキャロルしか知らなかった。
大江は黒いギターをかき鳴らし、がなる様に歌っている。
髪はリーゼント風である、今まで接していた音楽と変わらない
バリバリのR&Rである。電気に打たれた様だと言っても構わない。
”FOOL FOR YOU”では頭の中でいすゞベレットのクーペが
180キロで疾走している様な妄想を描いたと証言しても差し支えない。
でも何か変だ、なんでだろう、と、坊主頭の中学生は心の奥で思っている。

大体大江の顔は”ROCK”って顔じゃない、えらの張った下ぶくれな
顔だしギターの男はなんだか俳優とかモデルって感じだ。
ただ1人ドラムの奴はROCKっぽい、怖い、かったるそうに、
でも凄いドラムを叩く。
それと、ボーカルに抑揚がない、永ちゃんやジョニーの様にはまり込んで
歌の中の人物になりきっていると言う感じではない。
ただただ、どこかに向かって疾走している。
ともあれ、次の週には、たった1人のROCK友達と”大江の物真似”を
教室で競い合った。

ここで、私事っぽくなるのだが、まあお許し下さい。
その頃はROCKとは悪っぽく振る舞わなければかっこよくないと
信じ込んでいたのだが、気の小さな中学生には無縁の話であって、
いつもその狭間で悩んでいた。
今から思えば笑い話ではあるが・・・。
いつでもROCKと言う”アニキ”に「おまえはださい、かっこ悪い奴だ」と
言われてる様な気がしていた、JOHNにも永ちゃんにも。
そしてもう1人又増えた、大江だった。

怖くて、ずるそうで、しかしこないだNHKで観た永ちゃんの様に
饒舌ではない、ぼそっとなんか番組の中でしゃべったが良く聞こえない。
ギターを覚え始めていたし、BANDをやりたいなと思いだしていた
ROCKのかっこよさを知り始めた当時、ROOSTERSは1つの
基準だった。

最新型R&Rは自分でギターを弾いてBANDをやる時のルールだったし、
4人組でスーツ姿で、つっけんどんに演奏する、MCはしないと言う
態度にも惹かれた。
しかし、4人組が7人組になり、スーツが普段着になってもかっこよさは
変わらなかった。
メンバーが各自バラバラに好き勝手な事をやっていても、音は1つの塊に
なって出てくる。
BANDのありかたがSTONESやWHOの様でと言うよりも、彼らに
よってこれらのBANDの存在を知らされた。

そう、彼らはいつでもMUSIC MASTERであった。
悪っぽくない田舎のガキにとって、彼らぐらいにかっこ良くやるためには
”つやつける(かっこつける)”だけでは駄目だ、と言うか、悪い事は
どうも無理そうだ、じゃあどうする?
答えはすぐ出た、彼らが聴いていたのと同じものを聴けば少しは近づける。
大江はいつも”ハウリング・ウルフ”と言ってたぞ、初期STONESか、
ありゃ音がBEATLESに比べて汚いからな、でもROOSTERSが
好きってんなら、イギーの前座で奴らが出たのか、大江がヒーローズを
歌ったのか、宿命の女?誰それ?

こうやって聴く音楽の幅が広がって行き、少しずつ世界も広がっていく。
高校生活はゴミでもROOSTERSやギターを握れば自分のものだった。
今思うと結構良い学生生活だったかも・・・

ROOSTERSのお陰で、あいつはROCKにうるさいと言われる様に
なったんだから(笑)。
大江は最初は”ずるくてかっこいい”存在だった。
しかし、途中で”太宰 治”の様に”ださそうではあるがずるい”存在に
変化(私の中での)していった。
これの説明を未だに出来ないのが歯がゆい。

ROOSTERSは彼にとって”道化”であったのだろうか。
自分を表現する為の下敷きなら大江にとってはROOSTERS以上の
”下敷き”を未だに手に入れているとは思えない。
勿論一連のソロ活動を否定はしていないつもりであるが・・・。
私にとっては大江は”R&R MACHINE”そのものであった。
そして、あの”違和感”は未だに今の私に直結している。